中澤選手、安田選手、橋本選手

橋本:そもそも小西さんはどういうきっかけでガンバのスーツスポンサーをしようと思ったんですか?

小西:僕はもともとガンバさんのホームタウンでもある茨木市の出身なんですよね。そこで母親が『ブティックミチ』というのをブティックを経営していて…その流れで仕立て屋という流れもあるんですけど…。

安田:『ミチ』って名前がいいわ!そんな時代からきっと縁があったんやわ、僕らに(笑)。

小西:かも知れないですよね。それに、自分の生まれ育った地元にプロサッカークラブがあるなんて縁はなかなかないですからね。しかも僕が小学校の時には、現在ガンバさんの練習場がある万博にもしょっちゅう行っていて…小学校の時は遠足にも行ったし、中学の時は外周を走らされた記憶もある(笑)。その地元で、皆さんのようになんとかサッカーや地域を盛り上げようと頑張っている人たちを、純粋に僕も応援したかったというのが1つですね。だから去年の年末にガンバさんから話をいただいた時はすごく嬉しかったし、そのあとガンバさんが天皇杯で優勝するのを見て『これは、やるしかない!』と決断できた。もちろん、単純にサッカーが好きだというのもありますけど。

BESPOKE-TAILOR-DMG店内画像

あと…これは5年ほど前にさかのぼるんですが、僕がスーツの開発から携わっている株式会社ワールドクールストラティンというブランドがあって。残念ながら店舗は東京でしか展開していないんですけどね。その仕事をするにあたり、ワールドの会社の方に『ゆくゆくは、このブランドでサッカー日本代表のスーツをやりたい』っていう話をしていたんですよ。っていうのも、このクールストラティンのスーツは、アスリートに対応できるスーツというのがテーマだったから。ただ、現在、日本代表のスーツスポンサーはダンヒルさんがされているように、なかなか現実的な話にはならない。でも、僕としてはイギリスのスーツを日本代表が着るということ自体がどこか気持ち的に負けているんじゃないか、というのはずっと思っていて(笑)。日本代表なんだから、日本のブランドを着るべきだ、と。まぁ、サッカーとブランドはあまり関係ないかも知れないけど、そこは僕なりの考えがあって、そんな風に思っていたんです。

安田:言われてみたらそうですよね!サッカーでも日本化、日本化と言っていることを考えれば、スーツも日本のブランドを着た方がいいっていうのは分かるような気がする。

中澤:確かにそうだ。サッカーも含めて、なんでもかんでも世界、世界、って言うけど、スーツまで世界にのまれる必要はない。

小西:もちろん、そこにはいろんな事情が絡んでいるだろうから、簡単ではないとは思うんですけどね。でもとにかく、そういうことを元々考えていた中で、ガンバさんから声を掛けてもらったので、自分の中でスムーズに事が進んだ感じはあったと思います。もともと先ほども言ったように、ガンバさんは地元のプロサッカークラブということでサッカー界の中でも応援していたチームだったし、だから08年のクラブW杯も東京まで見に行きましたしね。

橋本選手

あと、もう一つ、忘れてはいけないのが、うちもメーカーというより、テーラーの仕立て屋、職人の集団だと言うプライドを持って仕事をしている中で、プロサッカー選手の皆さんも、ある意味、『職人』じゃないですか?そこに自分なりの共通点を見いだしたこともありました。

橋本:ちなみに、この『BESPOKE TAILOR DMG』の名前の由来は何ですか?

小西:話し合い、を意味する『Be Spoken』という言葉から出来た略語で、もともとは200年ほど前にイギリスで生まれた言葉なんですよね。要は細かな部分に拘って話し合いながら物事を作り上げていくことを表現する時に用いるというか。例えば、ロンドンでサブウェイというサンドウィッチ屋さんに行くと、お客さんが「チーズを入れて、ソースをかけて、レタスを入れて…しかもそのレタスは赤レタスじゃないと嫌だ」というような細かな部分に拘って注文している。そういう人に対して店員さんが冗談で『ビスポークな客だ!』と言う、みたいな。他にも、イギリスの人たちはビスポークシューズやビスポークリビングっていう使い方をよくするんですけど、要はものごとに拘ることに対して『ビスポーク』という言葉を使うんですよね。そのことをヒントに、僕らもオーダーメイドスーツを作る際に、同じように数ミリ、数センチに拘ってスーツを作るということから、この『ビスポーク』という言葉に仕立て屋を意味する『テーラー』をくっつけて店名にした。あと『DMG』については、僕なりに思い入れのある頭文字なのですが、詳細は秘密です(笑)。

橋本:僕らもある意味、数センチ、数ミリのパスやプレーに拘っているという意味ではそこも共通する部分かも知れないですね!

BESPOKE-TAILOR-DMG店内画像

中澤:すっげぇ、ハシさん。今、マジで感動した。本当にその通りですよね。

小西:それは僕も考えましたね。だからサッカー選手はやっぱり『職人』なんだと思います。ちなみに、皆さんがサッカー選手として拘っているところってどこですか?

安田:そこはハシさんから答えてもらおう!だって、この中で一番職人っぽいもん。

橋本:僕のこだわりは…それこそ、『Be Spoken』、話し合いですね。試合中も、ああしたらいいんちゃうか、こうしたらいいんちゃうかって常にしゃべっていますから。

安田:いや、試合中だけじゃないから。ハーフタイムのロッカーなんて、監督以上にビスポークなハシさんがいるからね。

中澤:そうそう、ヤットさんがシャワー浴びている間も、ひたすらしゃべってる(笑)。だから、みんな完全に監督ではなく、ハシさんを見ていますから(笑)。うちの『ビス本』ですよ。

安田:それを対して僕らは完全な聞き役やからね。実際、僕も聡太くんも、ハシさんの言いなりだから(笑)。

中澤:間違いない! で、ミチのプレーのこだわりは何なの?

安田選手

安田:僕は…本能ですね。本能でどれだけ勝負できるかに拘ってる。聡太くんは?

中澤:ウ〜〜〜〜ン(沈黙)。

安田:聡太くんは考えるまでもなく、気持ち、闘志やろ!

橋本:うん、聡太は気持ちが相当強いからね。

安田:試合中のリアクションを見ていても、ピッチ上の誰よりもオーバーリアクションやし、何より審判とは毎回、かなりビスポークしているよね。ハシさんは他の選手とビスポークして、僕は自分とビスポークして、聡太くんは審判とビスポークしてる、みたいな(笑)。

中澤:あと、敵の外国籍選手とかね。

橋本:ケネディとかね?

中澤:そうそう、ケネディともビスポークした…っていうか、思い出させるな!今はまだケネディと聞いただけでかなり凹んじゃうから…(苦笑)。って何だっけ?こだわりだっけ?とにかく、僕は自分かな。試合の中でどれだけ自分を出し切れるか。

中澤選手

だって、どんなに気持ちがあっても、やりたいと願っても、自分の持っている以上のものは出せないですからね。とにかく、最低でも自分が持っているものを1試合の中で、目一杯出し切って戦えるかには拘っていますね。

小西:そういう自分の強みだとか、プレースタイルっていうのは、もともと備えているものなのですか?あるいは、プロになって時間をかけて自分のスタイルを見つけていくのですか?

中澤:それぞれがプロという厳しい世界の中でいかに自分が生き残れるかを考えて、見つけていくんじゃないすか?プロになるような選手は、殆どが高校や大学時代は中心選手だったはずだけど、プロという巧い人ばかりが集まったハイレベルな世界に身を置く中で、更にその中で中心選手になるための道を見つけるというか。自分の立ち位置とか、これで活きる、勝負するというものを見つけなければいけない。なんて言うか、たくさん巧い選手がいる中で、その間をかいくぐって武器をみつけて勝負していくというか…少なくとも僕はそういうタイプですね。

小西:おっしゃっていることはすごく分かります。僕らの商売も、似たようなところがありますから。どの世界もそうだと思いますが、やっぱり自分がやりたいことだけをやっていても勝負できないんですよね。もちろん、それで評価されたら一番いいけど、そうじゃないことも多いから、勝負できることを見つけてその世界に生き残る方法を考える。もちろん、その中でチャレンジしていくことも忘れてはいけないですしね。

スーツ仮縫い画像

橋本:確かに、そうですよね。守りにばかり入っても安泰かも知れないけど面白くないし、かといって自分の好きなように攻めてばかりいても評価されるとは限らない。そこは自分というものをしっかり理解した上でやっていかなきゃいけないんだろうなって思います。

中澤:ところで、話は変わりますけど、オーダーメイドスーツって作るのにどれくらい時間がかかるんですか?

小西:うちがやっているフルオーダーというのは、仮縫いして型紙を作ってということからやるので、1着あたり1ヶ月近くかかりますね。ただ、今回、ガンバさんに提供させていただいているスーツはスーツスポンサーの契約をしてから仕上げなければいけない期日までにあまり時間がなかったので、仮縫いという作業を省略させてもらったんですよね。それが少し残念だったんですけど、来年は今着ていただいているスーツをベースにより進化したものを、フィット感という面でも更に優れたものを着てもらえると思います。

橋本:今でも相当、着心地がいいのに、もっと進化するんですか?!楽しみですね。


text by misa takamura

人物撮影 フォトグラファー 竹田俊吾

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対談その3へ続く